最高裁判所第一小法廷 昭和23年(れ)1211号 判決 1948年12月02日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人中野峯夫上告趣意第二點について。
檢事は原審公判廷で公訴事実として所論のごとく第一審判決事実摘示の通り「被告人は昭和二二年一〇月二五日頃當時の勤務先東京都中央區銀座三丁目一番地東京PX四階倉庫で連合国占領軍の財産であるパジャマ上下婦人服上下各一着を窃取したものである」と陳述したこと並びに原判決は所論のごとく右公訴事実中婦人服上衣一着を除きその餘の事実全部を認定判示したが該上衣一着については特にこれが判斷を示さなかったことはいづれも所論のとおりである。しかし該上衣一着は本件窃盗罪の客體たる衣類パジャマ上下、婦人服上下合計四點中の一點であって一個の犯罪の客體の一部に過ぎないものであるから、かかる一部分につき特に判斷を下さなかったからと言って所論のように審判の請求を受けた事件につき判決をしなかった違法ありといえない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって刑訴第四四六條に則って主文の通り判決する。
この判決は(中略)裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 岩松三郎)